まち全体を不登校の子どもの居場所に
けせんぬま旅する学校(けせんぬま森のおさんぽ会)
けせんぬま旅する学校は、学校を休みがちになってしまっている子どもたちと自然の中で活動する、子ども・子育て支援コミュニティ。2017年の団体登録以来、「育児サークル型の森のようちえん」として未就学児の親子を中心に活動してきた「けせんぬま森のおさんぽ会」が不登校の子どもたちが集まるようになり新たに立ち上げました。海・山・川の三拍子揃っていて、しかも人を受け入れることに慣れた港町、そんな気仙沼の環境を活かして、森や海やお寺、ツリーハウスやベース基地などで、体感して学ぶ場所をつくっています。
活動日は主に毎週火曜日と木曜日の10時~16時。このほか、子どもたちの興味や季節に合わせた単発の活動があります。対象は小学生を基本としていますが、中学生や未就学児の親子参加も可能。入会金は保険加入も含めて3,000円。参加費は、子どもを預ける場合のみ月15,000円あるいは1回2,000円(6歳~12歳)です。親子で参加する場合、参加費はかかりません。非会員も、1回1,000円(親子)で体験が可能です。
不登校率が全国1位の宮城県、気仙沼の小学生の「行き渋り」も少なくはない
全国的にも気仙沼市でも、少子化の中、不登校の数は増加しています。宮城県は不登校率が4年連続全国1位。気仙沼市では、2019年の統計で30人前後の小学生の不登校児(年間30日以上休んだ児童)がいるとされていますが、遅刻や早退、保健室や別室登校など「休みがちな児童」を含めると80人ほどの児童が「学校へ行き渋る」という現状があります。
森のおさんぽ会代表の杉浦さんは、おさんぽ会に参加した不登校の小学生のお母さんたちから、
「子どもがなんで学校に行けないのかわからない」
「どこに相談したらいいのかわからない」
「日中どこに連れて行ったらいいかわからない」
「学校とのやり取りが大変」
「子どもが学校に行かないので働きに出ることもできない」
「近所の人たちの目が厳しい」
などの声を聞き、不登校をめぐってさまざまな問題があることを知ったと言います。
地方ならではの不登校を取り巻く問題に向き合って
その後、長男の不登校の経験も経て、杉浦さんが地方ならではの不登校を取り巻く問題として挙げるのがこの3つ。
①居場所がない
②移動手段がない
③友達がいない
旅する学校は、この3つの問題に向き合うことで生まれました。
まず、①居場所がないということ。地方にはまだまだ不登校の子どものための場所が多くありません。けれど、おさんぽ会の活動を通して杉浦さんは、豊かな自然環境こそが、子どもたちの心を開放し、それぞれの興味を引き出す居場所になることを見てきました。文科省の調査結果でも、「自然体験が豊富な子どもほど自己肯定感が高くなる傾向」が見て取れるといいます。
そこで生まれたのが「まち全体が学校」という発想。
季節や天候や子どもたちの関心に合わせて移動する学校を実現するために、ワゴン車を用意しました。これは、②家から居場所までの移動手段がないという問題の解決にも繋がります。
そして、気仙沼だけではなく、車で1時間圏内の宮城県南三陸町、登米市、石巻市、岩手県一関市、奥州市、陸前高田市などの不登校の子どもたちとも一緒に活動することで、③の友だちができにくいという課題に対して、気の合う友だちを見つけていこうとしています。夏休み期間には他都市からの参加もありました。
また、さまざまなフィールドを教室とすることで、子ども同士だけではなく、親や先生以外の「友だちのような」大人とも知り合うことができます
不登校の子たちの居場所をみんなで考えていきたい
旅する学校では、カリキュラムを決めて活動するのではなく、1人1人の子どもたちの意思を尊重し、話し合いで何をするか決めながら1日を過ごします。ルールはみんなでつくる、がルールです。フィールドでのお仕事体験や普段の暮らしを通して、数などの生きていくために必要な知識や能力を身につけます。
杉浦さんは、旅する学校を子どもたちの選択肢のひとつとして、行政やほかの支援団体を含め、不登校の子たちの居場所をみんなで考えていきたいと話しています。
けせんぬま旅する学校(けせんぬま森のおさんぽ会)
不登校児の親子コミュニティ
問い合わせ先:k.tabisuru@gmail.com
基本活動日: 毎週火曜日・木曜日
基本活動時間: 10時~16時
設備:ベース基地(気仙沼市鹿折)、ワゴン車(送迎・移動用)
instagram : https://www.instagram.com/k.tabisuru
- 取材日
- 2022/06/29