ミカタのアクション

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森のようちえん

海と山と川と島のある気仙沼の、季節ごとの自然の中で保育を

モリノネ

モリノネは、気仙沼駅から10分ほどでありながら、里山に囲まれきれいな川の流れる自然豊かなエリアで「森のようちえん」を運営しています。

季節ごとの自然の中で思い切り遊んで

「森のようちえん」とは、自然体験活動を基軸にした子育て・保育、乳児・幼少期教育の総称。ドイツの「Wald Kindegarten」(=「森の幼稚園」)の考え方なども参考にして、日本では「NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟」が活動しています。(モリノネも加盟)現在は、月に3回ほど親子参加型のイベントで自然保育の体験の機会をつくりながら、一時預かりや常時預かりの準備を進めています。今後は、小学生以上の子どもたちのためのサマーキャンプなども実施していく予定です。

森のようちえんでは、その時々の季節やお天気、子どもたちの好奇心のゆくえに寄り添うため、なにをするかを事前に決めたくないとモリノネの赤畑さんは言います。

春は草花が次々に姿を見せるから、子どもたちは花を摘むだろう。摘んだ花で色水をつくりはじめるだろう。おさんぽに適した時期だから、蝶々を追って野原を歩こう。夏になったら、カブトムシやクワガタを探そう。暑い日は熱中症にならないように川で水遊びをして涼もう。もちろん、海にも出かけたい。秋は色とりどりの落ち葉やどんぐりを拾って、並べたりおままごとをしたり。ほかほかの焼き芋もつくって食べよう。冬は思いっきり雪遊び。折々の季節の行事もちょっとずつ取り入れて楽しみたい。

森で見つけた季節の木の実を食べる

赤畑さんにとっては子ども時代の普通のことでした。どうやらそれが普通のことではなくなっているらしい、ということに気づいたのは子育てをはじめたころ。少し下の世代のママ友には、子どものころ自然の中で遊んだ経験があまりないと聞きました。

赤畑さんは子どものころ、家の裏山で穴を掘ったり、秘密基地を作ったり、川でなにかをいじったり、木の実を取ったりして遊びました。友だちが毎日集まって、今日はこれをしようと誰が決めるでもなくその時の興味に従って、特にしゃべることもなく、大きい子も小さい子も混ざって、みんな集中して遊んでいたと言います。自分がそれを知っているギリギリの世代なのかもしれない、これからはそれをあえて伝えていかなくちゃならない、と考えるようになりました。

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自然の中の遊びの可能性は無限

赤畑さんは、2017年から5年間「けせんぬま森のおさんぽ会」の共同代表として、親子参加型の森のようちえんを毎月数回開催してきました。その活動を通して、自然の中で遊ぶと、子ども自身が遊びを幾通りも生み出すことに気づきました。自然の中の遊びの素材は無限にあり、保育者がほんの少し子どもを気づきへと導く声かけをすれば、遊びの可能性はどこまでも広がります。

また、「自然の中では“その子自身”を見ることが比較的容易にできる」と赤畑さんは言います。室内より範囲は広いけれど見渡せること、施設やほかの利用者への気遣いが不要であることから、大人のルールで子供の遊びを止める必要がありません。だから、子どもたちは心のままに身体を動かして遊ぶことができ、大人もそれをおおらかに見守ることができます。

もちろん、自然の中ならではの危険もありますが、赤畑さんのこれまでの経験上、子どもは自然の中の方が大人の目の届かないところへ勝手に行かないと言います。なにかあやしいもの、知らないものには「これなに?」と先に聞いてくるそうです。

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海・山・川、半島に島と揃った気仙沼の自然を活かして

関東の認可保育所で保育の経験を持ち、釜石市でイベント型森のようちえんを運営していた深澤さん。保育士であり臨床心理士でもある松田さん。その二人と赤畑さんが集まって、「子どもたちが毎日自然の中で沢山の経験を積んで成長できる、常時預かり型の森のようちえんをつくろう!」と決めた時、選んだのが今の場所でした。NPO法人ピースジャムの代表の佐藤さんがモリノネの理念に共感し、施設の共同利用を快諾してくれました。ここを拠点に、モリノネの子どもたちは、毎日その日のコンディションに合わせた場所におさんぽに出かけて遊びます。

この場所の良さは、つつじの名所である徳仙丈山の麓にあり、施設からおさんぽできる距離に川が流れている自然豊かなエリアであること。それに加えて、道路は交通量が少なく、見通しのよい直線であることから、安全も確保できます。敷地内にはピースジャムが整備したツリーハウスや木製遊具、ピザ窯もあり、これからモリノネで畑もはじめて、子どもたちにパーマカルチャーに触れてほしいと考えています。

海・山・川、半島に島と揃った、気仙沼の豊かなフィールドにも出かけて行きます。お花見のできる菖蒲沢、清流のある山里・八瀬、磯遊びのできる岩井崎、奥入瀬とも呼ばれる徳仙丈山の登山口の清流、気仙沼湾が一望できる低山・安波山、大きな銀杏のある清凉寺、大島の田中浜で海水浴、メンバーのフィールドだった釜石のコスモスの名所などなど、季節ごとに魅力ある場所があります。

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その子の根っこにたっぷりのお水を

これらには現在開催している親子参加型のイベントでも訪れています。月に2回、その季節に応じた場所でモリノネが体験できます。そのほか月に1回、拠点であるピースジャムでオープンデイも設けています。児童館や図書館など公共施設が休みで、子どもの遊び場に困る月曜日に設定。申し込み不要なので、気軽に訪れてみてください。

これまでイベントに参加した人はリピーターになることが多く、夏休み中は仙台や登米から来た親子もいたそうです。「子どもたちが楽しそう」「子どもがまた行きたいと言っている」「気仙沼出身の親でも、行ったことがない場所に連れて行ってくれる」という声が聞かれます。

「モリノネ」は、森の根っこ、子どもの育つ根っこ。それは、子どもが主体的に環境に関わっていく経験だとモリノネは考えています。

自分で考え、選択し、行動ができる。
だから、その行動に責任が持てるし、失敗しても立ち直れる。
その根っこに養分いっぱいの土を用意して、毎日たっぷりのお水をあげる。

モリノネはそんな場所です。

モリノネ

森のようちえん

住所:宮城県気仙沼市落合254-1

Facebook:https://www.facebook.com/k.morinone/
LINE:https://line.me/R/ti/p/@253cfxyg
Instagram:https://www.instagram.com/mo.ri.no.ne/
メールアドレス:k.morinone@gmail.com

取材日
2022/08/09